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*この話にはオリキャラが出ています。苦手な方はご遠慮ください*








雨。
まるでぼくの心を映すように降り続く。
その音に耳を傾けながらぼくは自身の隣に手を伸ばした。
そこには微かな温もりさえ残ってはいない。


あぁ…今日もまた彼はいない。


解ってはいたけれど、どうしようもない喪失感がぼくの中に生まれる。
ぼくはそれに気づかないフリをして、隣に無い温もりを恋しく想いながらも、彼が起こしに戻る数時間の間、再び眠りにおちるのだった。









窓の外を眺める。
瞳に映るのは最愛の王とその義娘、そして己の次兄だ。
外は雨だというのに笑い声が絶えず、とても楽しげに遊んでいる。
いつもならばすぐにでもとんで行き、
『へなちょこ』
『浮気者』
と彼を責めたてるのだが、何故かあの空間に入ってならないように感じた。
否、入れなかった。
次兄といる時の彼は普段とは比べようにならないほど楽しげな表情を見せている。
時々、自分のわからない彼のもう一つの世界のことについて話しているのを見ると嫉妬で狂いそうになる。
ぼくの前で見せるのは困惑や呆れ、怒りばかりだというのに。
あの幸せな空間を壊してはならないと、そう思ったんだ。
彼が望んでいるのはアレだと。
アレが本来の姿なのではないかと。
このような場面に出くわす時は特に思ってしまう。

どうしてぼくは女じゃなかったんだろう。
どうしてぼくはコンラートじゃなかったんだろう。
どうして…どうしてぼくはぼくなんだろう。

と。


「閣下」
「…ギーゼラ」


いつの間に来ていたのだろうか。
その声に振り返るとそこにはギーゼラが立っていた。
彼女が目を見開く姿が瞳に映る。
口にしていたのかと、ぼくは軽く舌打ちをすると彼女に言った。


「今聞いたことは他言無用だ。…特にユーリには言わないでくれ」
「ですが…閣下っ」
「ギーゼラ」
「…はい」


口調を強めて言うと彼女は納得しない様子だったが返事を返した。
そこでぼくは疑問を口にする。


「何か用があったんじゃないのか」


ぼくの言葉に彼女は言葉を濁らせ、宙に視線を泳がせる。
しばらく経つと彼女は口を開いた。


「…はい。閣下に面会を求める方が…」
「わかった。今行く」


またか。
と、ぼくは思いながらも彼女に返事を返す。
窓の下に視線を送ると、さっきまではしゃいでいた彼らの姿はもう其処には無い。
楽しげな彼らの姿を再び見なくてすんだことにホッとしたもの、これからあるコトを考えると再度憂鬱な気持ちになった。
それでもぼくは彼女の告げた場所へ向かうため重たい扉を開く。



雨は まだ 止みそうもない
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