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*少し特殊設定のお話です。詳しく書いてしまうと後の展開が丸分かりになってしまう恐れがあるので詳細は事細かに説明できませんが何でも受け入れるわ!という方だけ下からどうぞ*
















クリーム色の制服に身を包む。
この足元が頼りない短いスカートの丈だってもう随分と慣れたものだ。
全身鏡の前に立ち、ネクタイを締めていると心地よい声が鼓膜を打つ。


「スザク」


その声に導かれ階下へ降りればそこには見目麗しい婚約者がいつも通りキッチンに立っていた。







偽りのジュリエット







「おはよう、スザク」


フライパンを片手に振り返った彼の笑顔はにこりと音が立つようで。
花が咲いたように愛らしいものである。
いや、本当に正直言って可愛すぎる。
毎朝この笑顔を見られる僕は本当に幸せものだ。


「おはよう、ルルーシュ。ごめんね、毎朝朝食作らせちゃって…」
「いや、構わない。料理は好きだし、女性は朝は色々と大変だろう?」
「う、ん。まぁ…」


(女の子じゃないんだけどね)

そう、僕はこんな格好をしているけれど、生物学上は正真正銘男だ。
じゃあ何故、こんな格好をしているかというと別に女装が趣味だとかそういうわけではなくて。
生まれた時から身体の弱かった僕は昔からの習わしで本来の性別とは逆の女性として育てられてきた。
どんなに女の子として育てられてきたってやっぱり違和感は拭えなくって。
小学校に上がる頃には自分が周りとどこか違うことが分かっていた。
しばらくは両親にもそのことを言い出せなかくて。
結局10歳の誕生日を迎えた日に理由を教えてもらった。
そのおかげもあってか、今ではこの通り軽い風邪さえひかない身体になったのに。
どうやら母親はまだ心配らしく、せめて高校を卒業するまでは僕にこの姿でいてほしいようだ。
そんな母の言葉を無下にも出来ず、渋々承諾はしたけれど。
面白がっている節もあった気がしないでもない。
でも、正直言って。

(そろそろ潮時だと思うんだけどね…)

今現在高校一年生の僕は声変わりだって直ぐに迎えるだろうし、丸みを帯びていないこの身体だってもう隠し通すことは出来なくなるだろう。
というよりも、今までばれなかったことが奇跡としか言いようがない。
それによっぽどこういう格好はルルーシュの方が似合う…って違うだろ、僕。
彼は男だ。
そう、僕の婚約者であるルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは僕と同性。
つまり、男であるというわけだ。
まぁ、枢木家の【娘】である僕の婚約者といえば男であることは当たり前なのだけれど。
だからといって実際の性別が男である僕に男の婚約者を与えるだなんて。
自分の親ながら一体何を考えているのかわからない。
でも、何よりわからないのが、僕自身だった。
ルルーシュを見ると鼓動が速くなる。
笑顔を見れば嬉しいし、顔が熱くなる。
可愛いとも思うし、抱きしめたいとも、思ってしまう。
どうやら僕は彼のことが好きであるようなのだ。
男である僕が、彼を。

(ばれたら嫌われるな、)

キッチンに立つルルーシュの後姿を見つめていると不意に彼の紫電と僕の瞳が交差する。


「どうした?座らないのか?」
「ううん、本当に毎日悪いなぁと思って。ありがとね」
「だから、気にするなって」


そう言って小さく笑みを浮かべた後、美味しそうな匂いがする和食を机の上に並べていく。
正直思うのは、高校生になって異性と(っていっても僕も彼も男なのだけれど)二人暮らしってルルーシュはなんとも思わないのだろうか。
嫌われてはいない、と思う。
寧ろどちらかと言えば好かれている方だ。
彼は興味がなかったり嫌いな人間に対してあんなに柔らかい笑顔を浮かべたりはしないし、一緒にだって暮らせないだろう。
これは僕らが10才の時に初めて会ってから、この5年間で僕が学んだことだった。
まぁ、恋愛対象としては見られていないのだろうけれど…。
でも。
好きでいてくれるのが、それが友愛でも恋愛でも枢木スザクっていう【女の子】だとしたら。

(ちょっと、きついかなぁ)

腰につけていたエプロンを外しながら僕の向かいの席へと座るルルーシュを見つめながら思う。
差別とか、そういうことはしない子だってわかってはいるけれど。
それでもやっぱり嫌われるのは、恐い。
好きになってほしいだとか、恋人になりたいだとか、そんな事は言わないから。
せめて。


「食べるか」
「うん」


せめて、本来の性別で生きていくことになるまでの残りの3年間はこのままルルーシュとの幸せな日々が続いていけばいい、と。
そんな事を願ってしまう。
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