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18話派生 ミレイ+ルルーシュ












彼は窓の外を眺めていた。
ひどく、ひどく哀しげな紫を揺らめかせて。
彼はその向こうにただ一人の人だけを、見ていたのだ。




涙雨 【ナミダアメ】










「…なんですか、会長」


空を見つめていた彼が不意に声を掛けてくる。
一度も彼は私の姿を認めてはいないのに。
やはり気配には鋭いのかと、妙なところで感心してしまう。
声を掛けてきた後も彼の紫電を見ることは一度としてなかった。
彼はその先に何を見ているのか、そんな浅はかな質問は馬鹿馬鹿しくて出来やしない。
素知らぬ顔をしてあげるのが彼のためでもあるのだろう。
でも、それでも私は彼に声をかけずにはいられなかった。


「…大丈、夫?」
「なんの…事でしょうか」
「だって、だ…って、」


言葉を続けることが出来なかった。
彼を見ていることが出来なかったのだ。
唇を噛み締め、足元を見つめる。
悔しかった。
悔しくて、悔しくて。
私では彼を幸せにしてやることも支えてあげることも出来ないんだと、暗に言われているようで。
此処にはいない、ルルーシュの中を占める彼が、ルルーシュを裏切った彼が、憎らしくて、忌々しくて、少しだけ、ほんの少しだけ羨ましかった。


「会長は、…優しいですね」
「…ルルーシュっ」
「いいんです。あいつが、スザクが決めたことですから…」
「でもっ!でも貴方は…っ!」
「ミレイ」


ふっと空気が少し和らいだ気がした。
彼が小さく笑ったのだ。
哀しい、かなしい笑顔だった。
涙が零れそうになる。
泣いては駄目だと、泣けない彼の前で涙を流しては駄目だと必死で自分に言い聞かす。
顔を歪める私に、仕方がないとでもいうように苦笑する彼に再び泣きそうになってしまった。
そんな私に、彼は幼子に言い聞かすように語り掛ける。
それはどこか自分自身にも言い聞かすようで。


「ミレイ、いいんだ、これで。確かに軍に所属していることは賛成できなかった。俺は、ブリタニアを憎んでいるし、そんなところにスザクを渡したくはなかった、でも…」
「…」
「でも、あいつが自分で、自分自身でユーフェミアの傍にいることを望んだなら。そこで幸せを見出すことが出来るのなら、俺は、俺は…祝福してやるよ」
「ルルーシュ…」
「だから、いいんだ。…いいんだ、これで」


彼は再び空を見る。
薄暗い雲の合間から、一粒、二粒と冷たい雨が降り出した。
そう、まるで。
それは、まるで、


「まるで…涙のようだな」
「…っ」


そう口を開く彼の笑みは今にも泣き出しそうに歪んでいて。
どうしようもなく胸が締め付けられるのを感じた。

(この雨が、彼の哀しみを全て洗い流してくれたらいいのに)




あぁ、どうして世界はこんなにも、彼らに残酷なのだろう。
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