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*『ラベンダーの恋』シリーズを先にお読みください*


球技大会のお話です。
まだ二人は付き合ってません。








彼が密かに気にしている天然パーマの髪がふわふわとそのスピードに煽られ、宙を舞う。
翡翠色の瞳はいつも以上に真剣な光を宿していて。
一つのボールを追いかけ、彼は走る。


「こっちだっ」


スザクにボールが回れば、一人、二人と敵を抜いていき、瞬く間に彼はそれをゴールへ華麗に決めた。







貴方の笑顔に、私はいつだって。









「おい、ルルーシュ?どうした?」


一試合目を終えて戻ってきたスザクが声を掛けてくる。
思いがけない顔の近さに思わず焦ってしまって。


「え、あ、ス、スザク。おつかれ」


スザクの顔を直視できないままに汗を流す彼に持っていたタオルとドリンクを渡せば、それはもう彼にしてはとても爽やかな笑顔が返って来た。
心臓が、高鳴っていくのがわかる。


「おう、サンキュ。どうだ?ちゃんと見てたか?」
「ん…ま、まぁ、さすが体力馬鹿なだけはあるな」


咄嗟に口から出るのは憎まれ口で。
そんな自分が腹立たしくも、情けなくもなる。
どうしてもっと素直に、可愛らしいことが言えないのか。
ダンクシュートを決めた彼のその姿に思わず見惚れてしまったのに。
なんて。
自分のこの性格では、そんな事、口が裂けても言えないのだけれど。


「…お前は素直に上手かったとか凄かったとか言えないのか、この運動音痴が」
「なっ、なんだと」


彼は顔を覗き込むようにして言うと、その言葉とともに小さく叩いてくる。
相変わらず近い距離にいるスザクに思わずたじろぎながら答えると、不意に彼を呼ぶ声が聞こえてきた。
スポーツ関係ではものすごく活躍するスザクはやはり引っ張りだこで。
また試合に借り出されるみたいだ。
もう少しだけ一緒に居たかったな、なんて。
らしくないことを思ってしまう。


「じゃ、行ってくるからこれよろしく」
「ぶっ…おまっ、汗拭いたタオルを…!」
「よっしゃ!頑張るかな!」


私の抗議なんて気にも留めないで彼は大きく伸びをする。
そんな些細な仕草さえかっこいいだなんて思ってしまって。


「…ちゃんと、決めてこないと承知しないからな」
「ばーか、誰に向かって言ってるんだ」


その大きな背中に向けて投げかけた精一杯の憎まれ口に、彼は振り向いて。


「お前、俺に惚れんなよ!」
「…っ」


彼は笑って次の試合に向けてコートの中へと入っていった。

(ばか、スザク)

彼が頭に掛けたタオルをぎゅっと抱きしめる。
もうとっくに惚れてるだなんて。
絶対に言えやしない。
抱きしめたタオルから香る彼の匂いに、まるで抱きしめられているような錯覚さえ覚えてしまって。
さらに熱くなっていく頬を抑え切れなかった。
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